ピカデリーサングラスみたいな陽水(「デリンジャー」のメロディで)

kyojaku2005-03-14

そういえば井上陽水のツアー日程が決まってきているが未だに関東圏での公演が発表されない。早く決めろよ、行くんだからよ。
思えば俺の井上陽水原体験は俺が小学生時分の親父運転の車の助手席であった。
「誰も知らない夜明けが明けたとき〜」などと奇態且つ朗々とした歌声で始まったちょいと小洒落た良い歌がサビに入るに至って「ホテルはリバーサイド、食事もリバーサイド、川沿いリバーサイド、Oh,Oh,Oh,リバーサイド」などと幼心にふざけるにも程があるだろうとでも言わせたいのか?という程のふざけた歌詞が聞こえてきて歌といえばミスチル、ザード等しか聞いたことが無く全ての歌には「秩序の無い現代にドロップキック」だの「負けないで」だの「ららら今日も明日も貴方に会いたい」だの「鉄板の上で焼かれて嫌になっちゃうよぅ」だのの明快なマニフェストが存在するに違いねえと思い込んだら試練の道を一直線だった私は「こんな歌大のおとながまじめに聴いたりましてやカーステで自らかけたりするはずが無い」と思い思わず我が耳を疑い縋るように親父の表情を横目でチラ見。しかし奴はこんな歌聴きなれていて面白くもなんとも無いといった風情で軽くハンドルをタップしつつ軽く8分刻みでリズムキープしつつ軽くハミング気味でそ知らぬ無表情のほとり。J-POP全般に対するまだ幼いなりに魂を分けた同級生達と一緒に築き上げてきた儚くも美しい息子のアイデンティティが今まさに空想の川岸に向かって崩れ落ちていかんとしているこの瞬間にその態度は何だ!
「そうか親父俺のウケを取りに来てやがるな」
そうかそうかそうやって息子を混乱の淵に置き去りにしてさまよい泣き喚き最後には笑ってコラえてといった一連の我が息子の精神の彷徨をさらに上からあざ笑おうという魂胆だな。感の良い俺は親父の卑劣且つ子供じみた罠の存在にいち早く気づいた。
「け、そっちがそれならこっちにだって考えがある」
俺は混乱した内心をぐっとこらえてこんな歌聴きなれていて面白くもなんとも無いといった風情で軽くウインドウの上げ下げに使うハンドルをタップしつつ軽く十六分刻みでリズムキープしつつ軽くハミング気味でそ知らぬ無表情のほとり、スピーカーからは陽水の奇態且つ朗々とした甘い歌声クライマックス、暮れ行く夕べの空、流れるライト、暗闇に沈んでいくのにあわせて灯をともし昼間の醜さを覆い隠しまるで美しく化粧を施していくかのようなこの町並み、ホテルリバーサイド。